2007年に読んだ本ベスト10+

今年も年間100冊の読書を目標にしていたが、残りあと2日となって残念ながらこの目標はクリアできそうにない。前半は比較的いいペースを保っていたものの、夏場以降ペースが落ちて、結局トータルでは80冊程度だった。もっとも専門書、小説、月刊誌などは対象から除いているので、まあ満足といえば満足できる結果だ。(でもやっぱり100冊はクリアしたかったな)

今年読んだ本(今年出版された本ではない)の中から自分として特に評価が高かったものを以下にあげる。本当はベスト10を選ぼうと思ったのだが、残り2、3冊が絞り込めなかったので、全部で13冊。

  1. セキュリティはなぜやぶられたのか
  2. マニャーナの法則 明日できることを今日やるな (過去のレビュー
  3. レバレッジ時間術―ノーリスク・ハイリターンの成功原則 (幻冬舎新書) (過去のレビュー
  4. 無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法
  5. 無理なく続けられる年収10倍アップ時間投資法
  6. ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)
  7. 一冊の手帳で夢は必ずかなう - なりたい自分になるシンプルな方法
  8. 1分間マネジャー―何を示し、どう褒め、どう叱るか! (過去のレビュー
  9. ウサギはなぜ嘘を許せないのか? (過去のレビュー
  10. ウェブは資本主義を超える
  11. 過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか? (アスキー新書 042)
  12. 進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線 (ブルーバックス)
  13. ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ―ハイテク海洋動物学への招待 (光文社新書)

1. は自分の専門でもあるセキュリティに関する本だが、文句なくこれが自分にとっての2007年No.1だった。著者の Bruce Schneierはセキュリティ業界では知らない人はいない著名人で暗号関連の第一人者だが、最近はセキュリティを経済学や心理学の知見をもとに理解しようという取り組みを熱心に行っているようだ。本書の原書は2003年に出たもので若干古いのだが、内容的な古さは全くない。セキュリティを経済的な問題として捉え、「5段階評価法」でリスクとコストを客観的に評価することを提案している。執拗なまでにセキュリティにおけるトレードオフや人の問題に言及しており、とても現実的で実用的な内容である。専門家向けではなく一般向けに書かれたもので、非常にわかりやすい。ただひとつだけケチをつけるとすれば訳書のタイトル。原書は "Beyond Fear"なのに、なんでこんなタイトルをつけてしまったのか?全く内容とあっていない。2001年の9/11テロの恐怖を乗り越えて、セキュリティの本当の姿について正しく認識して戦っていこう、という著者の意図がこれでは全然伝わらない。


2から9までは自己啓発や仕事術に関する本から。
2 はそれほど話題になっていない本だが、GTDライフハック系の本があふれる中でも最高の出来だと個人的には思う。「マニャーナ」とはスペイン語で「明日」を意味する言葉らしい。原書のタイトルである "Do it tomorrow"が示すように、本書で提案しているタイム・マネジメントでは「明日やる」という判断を基準にするようにと教えている。このあたり従来のタイム・マネジメントとは一味違っていておもしろい。すぐに実践できる内容ばかりで、自分はGTDの手法に本書の手法も取り入れて自分なりにアレンジして活用している。


3から6まではいずれも今年のベストセラーのひとつ。
3の著者である本田さんと、4,5の著者である勝間さんはいずれも今年大ブレイクし、次々とベストセラーを出している。本田さんの「レバレッジ」シリーズ4部作はいずれも秀逸な内容だが、個人的には時間術に関する 3がもっともよかった。また4,5もすばらしい内容で、読者がすぐに実践できる具体的なものばかり。自分も早速いくつか取り入れてやっている。(たとえばオーディオブックの活用など)


6は「ウェブ進化論」の梅田さんが書いたその続編とでもいうべき内容。「ウェブ進化という時代の大きな変わり目において、私たちはどのような心構えで生きていくべきか」というテーマに取り組んでいる。これまでの著書やブログでの発言などを見ていると、目新しい内容はそれほどないのだが、4章のロールモデル思考法についてはとても考えさせられた。著者はインタビューの中で、「4章から書き始めて、この章の内容を納得してもらうために前後に何を書けばいいかを考えて、全体の構成を決めた」と語っている。つまりこの章が本書の全てと言っても過言ではない。著者はこの章の中で自分のこれまでのキャリアにおいて、誰のどの部分をロールモデルとしてきたかを語っており、そういった思考法を読者にもすすめている。ここがものすごく参考になったというか、羅針盤的なイメージを与えてくれたというか。これまで自分が周りに求めてきて得られなかったものがなんだったのか、そして今後は何をどこに求めていけばいいのか、きわめてクリアになった。


7から9は今年出版されたものではない。特に8は1983年の出版だが、それから昨年までに86刷を重ねる息の長いベストセラーである。7は「数値化できない目標は目標ではない」「私に解決できない問題は私に起こらない」「礼儀正しさに優る攻撃力はない」など著者の哲学があふれる1冊。9は今はやりのコンプライアンスについて考え直すきっかけを与えてくれる良書。


10と11はどちらも池田さんの著書から。かなり内容がかぶっているので、どちらか 1冊を選ぶとすれば11だが、どちらもお奨め。今まさに起こりつつあるIT革命について理解するうえで、梅田さんの本と池田さんの本はどちらも欠かすことができないと思う。ムーアの法則によって情報インフラがますますコモディティ化していく中で、なにが稀少性を持ちボトルネックになるのかを見極めることが重要だ。ちなみに、1の本については池田さんも書評で高く評価しているようだ。


12と13は科学的な分野から。分野は異なるものの、どちらの本も読者を最後まで全く飽きさせない内容になっている。12は著者がニューヨークの高校生向けに行った講義の内容をまとめたものなので、非常にわかりやすく、脳科学についての興味をかきたてる。13は「データロガー」という記録装置の活用によって生まれた「バイオロギンクサイエンス」という新しい研究分野についての紹介・・・なのだが、全然堅苦しい内容ではなく、海洋動物に関するこれまでの常識を覆す最新の研究成果がわかりやすい文章で紹介されていて、読みながらわくわくする1冊である。


来年も素晴らしい本にたくさん出会えることを期待して。