「努力する能力」を鍛えよう -- 就活の法則 (☆3)

就活の法則 適職探しと会社選びの10ヵ条 (講談社BIZ)

就活の法則 適職探しと会社選びの10ヵ条 (講談社BIZ)

danさんのブログで紹介されていたのを見て、興味がわいたので本書を読んでみた。
(404 Blog Not Found:就活オワタ\(^o^)/? - 書評 - 就活の法則)

著者の名前に見覚えがあるなぁ、と思ったら「プロフェッショナル原論 (ちくま新書)」の著者だった。なるほど、若干根性論的なあたりは確かに似ている。まあそれはともかく、内容的にはとても参考になった。自分は「採用する側」としてだが、もちろん「採用される側」の学生に読んで欲しい1冊である。


なにも奇抜なことが書いてあるわけではない、ごくごく当たり前のことが書いてあるにすぎないのだが、その当たり前のことが(特に就活中の学生には)見えないのではないか。自己分析(「やりたいこと」と「できること」を見極める)や差別化することの重要性などについて述べているが、就活で成功し(人気のある企業にはいることではない)、入社後も自分の目指す適職について自己実現のチャンスが得られるようになるためには、「努力する能力」が何よりも貴重であると言っている。これには全面的に賛成である。「努力すること」は誰にでもできる差別化要因なのだが、意外とこれを実践できている人は少ない。


自分は中途採用活動に面接官としてかかわることのほうが多いのだが、新卒採用活動で学生と話をしたりする機会も少しある。だから本書の著者が述べることは自分の経験を通して納得できることばかりである。学生からよく受ける定番の質問に、「自分はコンピュータやネットワークなどIT関連の知識が全然ないけど大丈夫か?」というのがある。こんな質問はナンセンスである。質問する学生としては、そういった知識のある学生と自分を比較して不安を感じているのだろう。それはわかる。これはよくある誤解だが、会社は新卒の学生に即戦力としての知識やスキルなど全く期待していないし、専門的な知識を持っているかどうかで、採用の合否を判定することもない。そもそも一部の本当に飛び抜けて優秀な人間を除くと、学生時代に身に付けた知識など大したことはないのである。そんなものは会社に入ってから努力して身に付ければいい。だからこういう質問をしてくる学生には「不安なんだったら自分で勉強すればいい」と言いたいし、それよりも学生時代のように時間に余裕のある時にしかできないようなことをやったほうがいいと思う。


実は中途採用でも少し似た例がある。「セキュリティコンサルティングの仕事に興味がある」などと言って応募してくるのだが、これまでの業務経歴を見ると全くそういう経験はない。もちろん経験なんかなくたって、できるようにはなるのだが、気になるのは応募者の姿勢だ。経験がないのはかまわないが、「そのためになにか努力してますか?」と聞くと、なにもしていない人が圧倒的に多いのである。「○○という資格を取りました」と言う人も多いが、なんぼかマシである。資格自体にそんな価値があるとは思わないが、少なくともこういう人は資格を取るために自ら努力している。なにもしていない人は「これがやりたい、興味がある」と主張しておきながら、それを実現するための努力をしない。「今の業務が忙しくて時間がとれない」などと言い訳をする。こういう人はまず採用されない。そうか、こういう人にも本書はいい薬になるかも。


本書は、新卒学生はもちろんのこと、転職活動中の人、会社で採用活動に携わる人、すべての人にとって意味のある良書だと思う。