CSOCレポートに見る Anonymousの実態(?)

オーストラリア政府の CSOC (Cyber Security Operations Centre)が書いたとみられる Anonymousに関する分析レポートの内容が一部で話題になっている。本当に CSOCのレポートなのか真偽は定かではないが、レポートに書いてある内容をざっくり紹介する。

"CSOC Assessment of the Activities of Anonymous in Australia"

  • Anonymousは2003年に画像掲示板で活動していたグループを起源とする。
  • Anonymousにはリーダーは存在せず、共通の理念や興味を持つ個人の集まりと主張しているが、実際には明確な組織構造が存在する。
  • 誰でも Anonymousになれるし、Anonymousの名で活動できることになっている。しかし実際には、リーダー達の承認なしにオペレーションを始めた場合、FacebookTwitterなどのソーシャルメディアで非難される。
  • 少数のコアメンバーがAnonymousのリーダーシップを支えている。具体的には、Sabu/Topiary/Owen/CommanderX/EleChe/Kayla/JoePie91/Tflow。(Topiaryは先月イギリスで逮捕され、現在保釈中)
  • アメンバーを支えているのは、約150人にのぼるコマンダー達。彼等は各地域やオペレーション毎の指揮をとっている。
  • コマンダーの下には副官達がおり、彼等は新メンバーの採用活動や訓練、脆弱性の研究、新なターゲットの調査、攻撃活動における調整などの責任を担っている。
  • 副官の下に多数のメンバーがいる。世界中に15,000人ほどのメンバーが存在すると考えられる。オーストラリアには少なくとも2,000人いる。LOICなどのツールで攻撃に参加するだけのメンバーもいれば、プロのハッカーもいる。
  • Anonymousはオープンプロキシ、Tor、i2pなどを利用して匿名化をはかる。攻撃ツールとしては、Backtrackや LOICなどを主に利用している。
  • 経験の浅いメンバーが LOICを使うと、Windowsのエラー報告ツールから当局に身元がばれることがある。こうしたメンバーが危険にさらされていることについて、リーダー達はあまり気にかけていない。

この他にもレポートには、過去のオペレーションの概要や、オーストラリアで活動している Anonymousについての情報が記載されている。


さてこれらの内容についてだが、はたしてどこまで実態にせまっているのだろうか? Anonymousの起源という画像掲示板は 4chan.orgのことだろう。また勝手に始めたオペレーションが非難される例も最近の Operation Facebookなど確かにある。特に組織構造についての記述は興味深いが、このレポートで述べられているような、リーダー、コマンダー、副官、メンバーという厳密な階層構造があるとはちょっと考えにくい。また人数の根拠も不明だ。ただし、そういった役割を担っている Anonymousが存在することは事実だろう。一部の Anonymousがリーダーとして全体の方向性を決めていることも、おそらく間違ってはいないだろう。彼らは AnonOpsの IRCオペレーターでもあり、コミュニケーションの場を管理している。リーダーシップを発揮しやすい立場だと言える。

リーダーとして名前が挙がっている8人のうち、Sabu/Topiary/Kayla/JoePie91/Tflowは LulzSecのコアメンバーまたはその協力者としても名前が挙がっている。Owenも過去に Anonymousのリーダーの一人として名前が出ている有名な人物だ。例えば 5月にクーデターを起こした Ryan(のちにイギリスで逮捕される)はメディアでのインタビューで Owenを名指しで批判しているCommanderXPeoples Liberation Front (PLF)を立ち上げた人物の一人で、PLFは度々 Anonymousと共同作戦を実施している(最近では #OpOrlandなど)。メディアにも度々登場しており、最近も CBSのニュース番組でインタビューに答えている。EleCheについてはあまり聞いたことがない。


このレポートを見た Anonymousの反応は冷やかだ。

AnonNetもフォーラムでこのネタを取り上げている。
http://forums.whyweprotest.net/threads/csoc-assessment-of-the-activities-of-anonymous-in-australia.92788/


興味のある方はレポートを読んでみてほしい。元のPDFはココに、また Pastebinでも読める。