LulzSecの50日間の軌跡 (Part 4)

(Part 1)はコチラ。(Part 2)はコチラ。(Part 3)はコチラ

書くほうも読むほうも、そろそろ飽きてきたんじゃないかと思う今日この頃。でもなんとか最後までは書こう。前回からずいぶん間があいてしまってすいません。

Manifesto発表?

Twitterでの 1,000 Tweetの節目に彼らはプレスリリースを出した(Ars Technica はマニフェストと呼んでいる)。自分達のこれまでの活動を振り返りつつ、彼らの動機などについて語っている。

http://arstechnica.com/tech-policy/news/2011/06/lulzsec-heres-why-we-hack-you-bitches.ars
http://pastebin.com/HZtH523f

Web Ninjas活動開始

これだけ派手に活躍すれば、当然ながら敵対勢力もあらわれる。その代表格が Web Ninjasだ。彼らは LulzSec Exposedというサイトを新たに立ち上げ、LulzSecメンバーについての情報を公開しはじめた。彼らの活動は LulzSecが活動停止を宣言したあとも続いている。
lulzsecexposed

頼もしき仲間達 Lulz Lizards

そして敵がいれば当然味方もあらわれるわけで。@LulzRaft, @UberLeaks, @LulzSecBrazilなどが LulzSecの活動に賛同しつつ、それぞれにDDoSやハッキングを行った。そんな彼らを "Lulz Lizards"の仲間達と呼び、LulzSecは歓迎した。

そして AntiSec作戦スタート

そして満を持してと言うべきか、6/20に Operation Anti-Security (AntiSec)が開始された。ネットの自由を侵害し管理しようとする各国政府(およびそれに協力する企業)に対する宣戦布告である。


驚くべきことに、彼らのプレスリリースには Anonymousと共闘するとの宣言が。
http://pastebin.com/9KyA0E5v

Welcome to Operation Anti-Security (#AntiSec) - we encourage any vessel, large or small, to open fire on any government or agency that crosses their path. We fully endorse the flaunting of the word "AntiSec" on any government website defacement or physical graffiti art. We encourage you to spread the word of AntiSec far and wide, for it will be remembered. To increase efforts, we are now teaming up with the Anonymous collective and all affiliated battleships.

これまでにリークされた IRCの内容などから、すでに LulzSecメンバーが Anonymousによって構成されていることはほぼ判明していた。そして Anonymousとは全く別の活動として位置付けるために、わざわざ LulzSecという別の名前でこれまでとは違うやり方で活動してきたのだと思っていた。しかしここへきてどうやら路線変更をせまられたようだ。(あるいはこれもシナリオ通りなのだろうか?)

Anonymousとの共闘作戦とは言うものの、AntiSecは LulzSec主導で行われたことは間違いないだろう。Anonymousは無理矢理引き込まれた格好だ。


なお後に行われた LulzSecリーダーの Sabuへのインタビューで、彼自身が AntiSecとは何か?との質問に答えている。以下、一部を引用する。
Exclusive first interview with key LulzSec hacker | New Scientist

How do you describe what Antisec is about?

"Expose corruption. Expose censorship. Expose abuses. Assist our brothers and sisters during their operations in their own countries like the one we have going in Brazil now, Operation Brazil, which is about internet/information censorship. Expose these big multinational companies that have their hands in too much, that have too much power, and don't even take the time to secure your passwords and credit cards. And finally, discussion and education. We are not sitting idly by and letting our rights get thrashed. It's time to rise up now."


So what would an Antisec "win" look like?

"There is no win. There's just change and education."

LulzSecが逮捕された?(その2)

翌6/21になると、イギリスで Ryan Cleary(19)が逮捕されたとの報道が駆け巡った。彼は元 AnonOpsのIRCオペレータの一人であり、5月に起こったクーデターの首謀者である。LulzSecメンバー逮捕!と大々的に報道されたが、実際には彼はメンバーではなかったようだ。LulzSec自身も Ryanが管理する IRCサーバを利用していただけだとツイートしており、リーダーのSabuも自身のアカウントでメンバーは全員無事と発言している。

doxによる制裁

翌6/22になると今度は LulzSecが以前自分達の IRCのログを晒したハッカーの個人情報を公開した((Part2)参照)。IRCログにアクセスでき、自らも発言している人物であることから、元々は LulzSecのメンバーないしは協力者であったはず。彼らは裏切り行為の制裁を受けたのだ。このタイミングでの公開の意図は不明だが、Ryan逮捕によって自分達の身にも危険が及ぶことを心配し、当局の目を逸らすことを考えたのかもしれない。


しかし逆に TeaMp0isoNによって Joepie91のサイトが攻撃を受ける。Joepie91は LulzSecのメンバーではないようだが、リークされたIRCログで最も発言回数の多い人物であり、LulzSecの協力者と考えられている。

AntiSecリリース

6/23には AntiSecとしての初の大型リリースを行った。内容はアリゾナ州警察当局(AZDPS)に関する情報。ターゲットになった理由は、2010年にアリゾナ州が可決した移民法SB1070にある。この法律は不法移民の規制を目的としたもので、Anonymousはこれに反対する立場を表明している。

We are releasing hundreds of private intelligence bulletins, training manuals, personal email correspondence, names, phone numbers, addresses and passwords belonging to Arizona law enforcement. We are targeting AZDPS specifically because we are against SB1070 and the racial profiling anti-immigrant police state that is Arizona.


そして翌6/24、LulzSecはまたしても新たな敵の攻撃を受けることになる。ターゲットになったのは彼らの Webサイト lulzsecurity.com。On3iroiが DDoS攻撃を行ったのだ。この頃には LulzSecに対する包囲網も厳しさを増していた。

そして誰もいなくなった…?

そしてこのような状況の中、6/26になると突然の活動終了を宣言し、またも世間を驚かせることになる。また終了宣言にあわせて最後の大型リリースもおこなった。これには AT&Tの内部情報をはじめとして、様々な情報が含まれていた。どうも手持ちの情報をまとめて全部放出したような、まとまりのない印象を受けた。
彼らのプレスリリースによれば50日間という活動期間はあらかじめ計画されたものとのことだが、はたして本当だろうか…

AntiSecというムーブメントを起こし、軌道に乗りつつある今、もはや LulzSecという形にこだわる必要がなくなったのかもしれない。LulzSecメンバーも引き続き AntiSecの活動を継続すると言っている。さてこれはシナリオ通りの結末なのか、外堀を埋められて追い詰められたうえでの止むを得ない結果なのか。それは本人達に聞いてみないとわからない。

50 Days of Lulz - Pastebin.com

おまけ (その1) 〜 その後の LulzSec 〜

活動終了宣言のあとの LulzSec。しばらくはおとなしくしていたが、7/17に CBSNewsで放映されたカーチェイスの様子をTwitterで実況中継したかと思うと、7/19には盗聴疑惑が話題となっていた The Sunと News of the Worldに攻撃をかけて健在ぶりをアピール。7/20に全米で14人の Anonymous逮捕のあとには、Anonymousと共同で FBIに対する共同声明を発表している。

しかし LulzSecの Twitterアカウントを運用していると言われた広報役の Topiary(18)が 7/27にイギリスで逮捕されると、以降 Twitterは更新されない状態が続いている。

また彼らのサイト lulzsecurity.comについても、利用していたVPSの支払いを停止したようで、7月末からアクセスできなくなっている。

おまけ (その2) 〜 LulzSecの読み方 〜

LulzSecについての日本での報道を見るとほとんど「ラルズセック」と呼んでいる。しかしカタカナ読みするのであれば「ローズセック」ないしは「ロウズセック」のほうがより近い。ということで私自身は「ローズセックって呼ぼう!」キャンペーンを密かに展開中である。残念ながら賛同者は非常に少ない。(^^;