JASA 情報セキュリティ監査セミナー

2007年度 情報セキュリティ監査セミナー in TOKYO

今さらですが、昨年末の12/19に参加したJASAセミナーのメモ。資料は上記URLからダウンロードできる。途中いくつか平凡な内容もあったが、全般的には非常に満足できる内容だった。それにしても参加者の数がハンパじゃなくて驚いた。

ISMSとセキュリティ監査について」Dr.Angelika Plate 氏

講師の方は、ISO/IEC JTC1 SC27 WG1の Vice Chairを務めている人。27000シリーズのエディターを担当しているらしい。講演ではISMS関連のISO規格の話と、自身の経験から見た、セキュリティ監査における様々な問題点についての紹介。非常に興味深い内容だった。

(1) ISO/IEC 27000シリーズの動向について

いくつか新しい動きがある。

bold;">ISO/IEC 27007 "Guidelines for information security management systems auditing":ISMS の監査におけるガイドライン。まだワーキングドラフトの段階だが、発行までには2年くらいはかかりそうとのこと。その一つの原因は、この規格が ISO 19011をベースにしているから。ISO 19011自体が現在見直し中の状態なので、それをベースにした本規格もその内容に追随する必要があるので時間がかかるということらしい。
bold;">ISO/IEC 27008 "Technical ISMS Audits":こちらはまだ Study Period期間中。2008年4月に京都で開催される会議で今後の策定に関する決定が行われるらしい。内容はセキュリティ監査の技術的な面にフォーカスしたもの。ISO/IEC 27006(Accreditation requirements) Annex Dをベースにしている。あとのKDDI中尾さんの講演内容によると、スウェーデンや日本が積極的に内容を提案しているらしい。
(2) ISMS監査に関する問題

講師の個人的な経験を元にした見解。

  • EUでは短い時間で充分な監査をしないまま認証しているケースがある
  • 監査人の能力、スキル、経験が不十分。ISO/IEC 27006に監査人に求められるの力量の基準を設けているが、基準が高くなりすぎると必要な人材が不足してしまう。時間が解決する問題か?
  • マネジメントシステムの問題。内部監査やマネジメントレビューの必要性についての理解が不足している。また是正措置がメインになっていて、予防措置がおろそかになりがち。
  • リスクアセスメント手法の難しさ。複雑すぎるアプローチを採用している会社が多い。また資産登録に漏れがないかのチェックが欠如している。
  • 測定基準についての誤解。効果的ではない測定基準が採用されていたり、監査人もどのようにそれをチェックするか知らなかったり。ISO/IEC 27004(Measurements)がカバーする?

「国際標準化を見据えた監査手続き作成ガイド」中尾 康二 氏

  • 情報セキュリティ管理基準を改訂中(V2.0)。JISQ27001 Annex Aをベースとする予定。
  • これに対応する監査手続きガイドも策定中。これは監査/検証のポイント、対象、手続きのガイドラインをまとめたもの。
  • 特に「10. 通信及び運用管理」「11. アクセス制御」「12. 情報システムの取得、開発及び保守」の3つについては技術的な管理施策の監査ポイントを、「技術編」として詳細にブレークダウン。→ ISO/IEC 27008にも提案中(Annex Cとして採用)。

「保証型情報セキュリティ監査の社会的要請について」大木 栄二郎 氏

  • 保証型監査の概念フレームワークは以下の3つ。被監査主体と利用者との関係に応じて適切なフレームワークを選択する。
    1. 社会的合意方式
    2. 利用者合意方式
    3. 被監査主体方式
  • 被監査主体と利用者との関係は、以下のマトリックスで4種類にわけられる。縦軸は「重要情報の処理を監査対象に委ねる/委ねない」、横軸は「リスク認識を共有する/共有しない」を表す。
共有する 共有しない
委ねる グループ会社 業務委託
委ねない フランチャイズ 投資対象
  • 情報セキュリティ監査の価値は「利用者にとっての価値」がもっとも重要
  • 「保証」とは専門家(監査人)の意見表明であり、次の3条件が必要
    1. 専門能力
    2. 科学的なプロセス
    3. 品質確保の枠組みと審査制度

「保証型情報セキュリティ監査の利用シーンの紹介」永宮 直史 氏

  • 管理策の実施には以下に示す4段階の深さがある。どこまで徹底させるかによって、手間やコストが異なる。下に行くほど負担が大きい。
水準 記号 説明
規範レベル N; Norm 経営者の考え方が明確で社内に浸透
規制レベル R; Regulation ルールが明記され、ルール通りに実行
抑止レベル D; Deterrence 行動を監視、記録し、牽制効果と事後の検証が可能
防止レベル P; Prevention 技術的・物理的に制御
  • リスク分析の手法としてはOCTAVEを参考にしている模様。

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