先崎 学の実況! 盤外戦 ☆☆☆
将棋界の人気棋士が書いたエッセイ、なんだけど別に将棋の難解な話が出てくるわけではなく、日常のなにげないシーンをうまく切り出していて、肩の力を抜いて楽しめる。棋士の腕はもちろん一流(残念ながら羽生さんほどではない?)でエッセイストとしても一流と、マルチな才能を持っている人はいるもんだなぁ。
本書は大半が今回書き下ろしたもののようだが、同じ著者が数年前に週刊文春に連載していたエッセイをまとめた「先崎学の浮いたり沈んだり (文春文庫)」もとてもおもしろい。むしろこちらのほうが将棋指しというのがどういう人たちなのかその実態(?)がわかってオススメかもしれない。
将棋指しといえば、羽生さんの書いた「決断力 (角川oneテーマ21)」も以前読んで、すごくいいことがたくさん書いてあるのだけれど、どうもあんまり心に残らなかった。対談とかをまとめたやつのほうがおもしろいなぁ、などとそのときは思っていた。
今回先崎さんの本を読んでもしかしてと思ったことがあった。というのは先崎さんによると、
- 「決断力」は5年前に同じ出版社から出した谷川浩司さんの「集中力」と内容がかなり似ている(週刊新潮で疑惑が報じられた)
- 話によると、同じゴーストライターが、同じ出版社から、似たようなタイトルで、似たような本をだしたということらしい
ふーむ、なるほど。もしこれが本当なら読んだときになんとなく感じた違和感の原因はこれなのかもしれない。ちなみに先崎さんの本の内容を信用すると、このエッセイは本人が自ら原稿にしこしこ書いているようだ。
本書のようなエッセイをおもしろいと感じるかどうかはもちろん読む人次第なのだが、「うん、そういうのあるある」とか、「いや、そんなの絶対ないって」とか、共感したり反発したりするなにかしらの土台が必要なのではないかと思う。そういう点で私は羽生さんや先崎さんとは同年代なので、全然違う人生を歩んでいてもなんとなく共通する部分を感じることができるのかもしれない。(「クレイジークライマー」なんて聞くと超懐かしいのである。)
☆☆☆
- 作者: 先崎学
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